「映画という芸術の歴史を保護し、その功労者たるアーティスト達とその作品を敬意し、同時に次の世代の語り部たちの教育」を目的とする機関として発足されたアメリカン・フィルム・インスティチュート(AFI)のYouTubeチャンネルは僕のお気に入りの一つです。
功労賞として誰かが受賞すると、受賞者に関わりのある著名人がおめでとうのスピーチをします。どのスピーチも各自全く違う感じの切り口なのですが、見事なものばかりで毎回関心させられます。受賞者と著名人達の関わりなども垣間見えて面白いです。
色々とお気に入りがあるのですが、一番上の動画はロバート・デニーロが受賞した際のジュリエット・ルイスによるスピーチ。デニーロの演技の凄さとかを褒めるものではなく、彼の人となりがいかに素晴らしいかが伝わる、とても心のこもったスピーチです。
簡単な内容を説明すると、ジュリエットがまだ若いときに高慢な態度で脚本家や監督を馬鹿にした態度をデニーロの前でとったら、そういう姿勢は良くないよとデニーロにたしなめられた事があり、それから数年後の大人になった彼女は時折昔の自分のような若手を見かけたときには、かの偉大なデニーロはそういう態度を絶対にとらないわよと教える事ができるようになったという話です。
こちらはショーン・コネリーが受賞したときのもの。スピーチはピアース・ブロスナン。
簡単に端折るとこんな感じ。
11歳のときにアイルランドのど田舎からロンドンに家族で引っ越してきたピアース少年。少年は引っ越した最初の週に映画「ゴールド・フィンガー」を観にいきます。そこで初めて彼はスコットランド出身のショーン・コネリーを目にし感動します。
それから年月が経ち大人になったピアースは007の役を撮影し、大掛かりなスタントを終えて帰ろうと車に乗りギアを入れようとしたら、そこに偉大なるコネリーが現れます。「君がたった今やっていたのを拝見させていただいたよ。とても素晴らしかった。」、ピアースは沈黙します。するとコネリーは続けて「彼らは君に十分支払ってくれているかね?」とその日初めてあったにも関わらずそう言い放ちます。(会場爆笑)
それに対してどう答えたかはどうでも良かったとピアースは言います。偉大なコネリーが僕のボンドを見てくれたという事が意味があったのでしょう。
そしてピアースは続けてこう言います。
「ショーン、ぼくは貴方が歩んだ映画という道の足跡を追いかけてきました。そして貴方という呪いがかけられた映画の歴史の影で僕は踊ってきました。一人の役者としては貴方を頭と心の両方で抱きながら歩みを進めてきました。あなたは独自の道を歩み続け自らの伝説をボンドという名以上に高めました。その偉大な功績は永遠にたたえられるでしょう。そしてあらゆる意味で、ぼくは未だに貴方の姿とゴールドフィンガーに洗礼を受けたあの11歳のままでいます。映画が我々に与えてくれる夢はたくさんありますが、私のは実現しました。その非常に大きな要因として貴方に感謝しています。今夜はここに立っている事を身に余る光栄に思っています。おめでとうございます、ショーン・コネリー卿(閣下)」
いやーカッコいいです。何と言うか言葉の選び方が素敵。こんな英語を喋れるようになりたいもんです。
こちらはジャンゴが素晴らしかったジェイミー・フォックスのアル・パチーノへのおめでとうメッセージ。要約するのが面倒なのでかなり割愛します。ジェイミーがまだ若いときにパチーノと撮影をしたら演技に入りきって大声でまくしたてたパチーノの唾がジェイミーの顔にたくさんかかったばかりか、口にあった泡までが飛んできてジェイミーの唇の上にのっかったという。演技中だった事もあり、偉大なパチーノのだからと、そのまま飲み込んだDNAのお陰か後に見事にオスカーを獲得することができるようになったという話です(笑)
あと、徐々に色々な映画に出始めるとエゴの塊のような連中と撮影したりする事も増えたジェイミー、大御所であるパチーノはトレーラーにジェイミーを気さくに招いてくれ、色々とためになる話を聞かせてくれたといいます。そしてチェスをやったエピソードになると、もっと色々と話を聞きたかったから勝たせてあげたんだよと言うとパチーノが笑いながら指で違うだろとジェスチャー(笑)
まだまだたくさんの見事なスピーチがありますが皆さんも是非YouTubeのAFIチャンネルをのぞいてみてください。
一番良いのはキーワード「afi salutes to」の後に、俳優の名前(大御所の名前が妥当です)とか監督の名前もありです。
例: afi salutes to jack nicholson